モノローグ

想いの火は熱く激しくて…

彼女が長兄の余命いくばくもない先妻の代わりとしてここへきたのはもう4年も前のことになるだろうか……?
まだ幼さの残る19才の少女だった。
初めて会った時から愛の予感にとらわていた……だがそれは初めから叶うことのない想いだった。
そんなわたしの心を知ってか知らずか、彼女はなぜかわたしの後をついて離れなかった……。

彼女の結婚は一度目も二度目も短いものだった。
長兄は急逝し、次兄は組織の陰謀でやはり早くに命をおとした。
それでも短い結婚生活の中で彼女は精一杯に愛し、愛され、幸せな3年間を送っていた。
わたしの彼女への想いは決っして終ったわけではなかったが、敬愛する兄嫁として幸せそうな彼女を見るのはつらいことではなかった……。
兄たちを送る彼女の涙をみること以外は……。

三度目の婚約は形ばかりのものだった。
彼には心に決めた女があったし、彼女にも次の嫁ぎ先が組織によって決められていた。そしてわたしにもその彼女と一緒に行けという……。
決っして叶うことがないからこそ、この想いは逃げ場を失い激しくなるばかりなのに……。

守られていなければ生きていけない質の彼女は、7月末に次兄を亡くして以来わたしの傍らから離れようとしなかった。まして8月の終りの悲しみから立ち上がっていない時期に政略結婚を決められてからは尚更だった……。そんな彼女にわたしはつけ込んだのかもしれない……。彼女が愛してやまなかった次兄の真似をしたり、2000ポンドの首飾りを贈ってみたり……
今だけ……どんな手を使ってもこの想いを彼女に伝えたかった……。たったひとときの恋。
……すくってもすくっても指の間からすべり落ちてしまう水のように、彼女はまたわたしの手には留まらない……。
時に熱く、そして冷たく……彼女はただ微笑むだけだ……。
そしてその束の間の恋ももう終る……。

香港への組織御披露目の旅行は次の彼女の夫も同行する。所詮わたしはただのやどり木にすぎないのかもしれない……。
それでも……この心の中に横たわる秘めたる想い……叶えるのは……。

まり……愛している……。



……このスト-リ-はフィクションです。設定がどんなに現実と似通っていても実在の人物とは一切関係はありません(^_^;)。