他人が勝手に噂する許婚者…。
時には鬱陶しいほどに心配性の兄…。
そんな人だと思っていた。
自分の意志とは関係なく、当たり前のように傍にいたから…
そこは自然、わたしの場所だったから。
だから「彼」という存在を意識することはなかった。
いつのまにか彼のうしろ姿を追っている。
今、見詰め合った時のわたしはどんな風に見えるのだろう?
いつもと違うわたし。
わたし自身にも分らない心の暴走……。
気づかなかった。
これも…愛だったと、別れの今になって初めて思い知る愚かなわたし。
彼の姿を見ると心が疼く。
気づかぬうちに涙を堪えている。
だって泣き顔なんてわたしらしくない。
彼の瞳を見ると心が叫ぶ。
いつのまにか涙が頬を伝っていた。
そうだ…彼はいつだって優しかったじゃない。
今日も暖かいまなざしがわたしを包む。
…もう、いつものように…なんて言えない。
いつものわたしでなんかいられない。
頬に添えられた手の優しさと暖かさ。
明日になればなくなっている幻のような今。
……そして、たくさんの想い出……。
後悔がわたしを苛む。
もっと早くに言えばよかった。
愛していると………。
『あなたへの想い
日ごと夜ごとにつのり
切なさで切なさでこの心は叫ぶ』
writed by ぽりーん/2004.1.13