ぽりーん先生の観劇レポート vol.20

ファントム

[04/05/17]

久しぶりに初日から観劇することができました。
ガストン・ルルーの原作は四季初演の頃に読んでおりますが、最後まで読み通すのが苦痛だった記憶しかございません。従って、全然内容も覚えていないんですねぇ。四季も記憶がない(^^;)。
で、こうやってイヤでも(^^;)じっくり内容に触れてみますと……やっぱり好きじゃないんですよ、作品的に……(T_T)。これはもう、個人の趣味の問題ですから、人さまにどう説得(^^;)されてもどうにもなりません。こき下ろすつもりは毛頭ありませんが、エリックって見方によっては純粋でナイーブな青年なんでしょうけど、私から見れば、統合失調症的猟奇殺人犯って感じ。ずーーーっと、地下で暮らしてて、社会との接触もなく育てばそれも仕方ないし、彼のせいではない。確かにある部分は純粋だけど、「僕の顔を見たんだ、仕方ないだろう!」で簡単に人を殺せるんだから、普通じゃない。

惚れた女が妊娠するまで、自分がすでに結婚していることを告白することもできなかったキャリエールは優柔不断で卑怯者のスケコマシにしか思えません。

嫌がるエリックに『顔を見せて、さあ…!さあ!!』と強要しておきながら正視に堪えられず、恐怖に叫んで逃げ出すなんざ、クリスティーヌってばただの勘違い女というばかりでなく、根性なしでもあるとんでもない女じゃないですか。愛があるから大丈夫ですってぇ?ふざけるな!!仮面を取るまでのエリックの苦悩、恐怖に表情が変わっていくクリスティーヌを見るエリックの瞳の哀しさと言ったら!!だめです。こんな女どうしても感情移入できない。

そんなことをされてもある意味純粋なエリックは「僕が怖がらせたから悪かった」なんて反省するんですよ!違うから。悪いのは明らかにクリスティーヌだから。逃げ出す前にせめて謝れ!!自分がどれだけ酷いことを『愛していると思っている人』に強要したか早く気付け!人間として許せん!!

しかも懸念した通り、演出はヘボい。振り付けにKAZUMI-BOY先生なんかも起用できるってことは上演するに当たって、制約はほとんどないんでしょうから、大元の演出の通りじゃなくてもいいんでしょう。つまりは演出家の力量を曝しただけってことです。前作で舞台演出の面白さを見せつけられた者としては、やはりその平面的な演出はとても物足りないし、ブツブツと途切れがちなシーン割りなども初日は本当にイヤで、これをまだ観るのかと思うとたまらなく憂鬱になったものです。けれどそこは宙組。主演コンビもアンサンブルも実にきっちりと見事なお仕事をしてくださいますから、演出のまずさは出演者たちによって相当救われています。でもこれで客が入って、演出家の評価が上がるとしたら悔しいくらいじゃ済まないわ。さすがのスポニチOSAKAでもご都合主義とか書かれているけど(^^;)。そして何よりご都合主義なんじゃないかと思うのはシャンドン伯爵の描かれ方。
もっとどうにか描きようがなかったのかしら?>演出家
その辺りをきちんと評価しなさいね!!>劇団関係者

先のことを懸念してもしょうがないのですが、ビデオやDVDよりも実況CDとかの方が演出のヘボさが気にならずストレスなく鑑賞できそうな気がします(^^;)。…と、申しましても、客席の大半は親子の名乗りの以降はハンカチを握り締め、すすり泣く声がそこら中から聞こえますから、きっといい作品だと思っていらっしゃると思います。ええ、いつだって私はマイノリティ。

そして、衣装。最近は制作スタッフ欄に衣装担当:任田とあっても安心できない。衣装補に不吉な名前が書いてある………。任田先生、最近お体の具合でも悪いのでしょうか?前作はデザインはきっと任田デザインで、生地選び等の段階から違う人?と思わせたのですが、今回は、デザインからか?と思われるものが数点。
前置きが長くなりましたが、ぽりーんが書くのですからこれでも実はお衣装報告なんですよ(^^;)。

【1幕1場】
おさげ頭に黄色い帽子をかぶってグリーンの上下セパレートタイプのドレス。インナーは白いスタンドカラーのブラウス。なぜか生成りのスカーフを一回絡げて、ジャケットの中に入れてます。まあ、お金もなかろうし、多少のダサさは当然でしょう。スカート丈は足首まで。編み上げブーツをはいて手には新曲の楽譜の入った籠を持ってかわいらしく本舞台奥、センターから登場。
帽子のせいか、初日からこの鬘はぼさぼさでした(^^;)。お手入れきちんとしましょうね。

【1幕3場B/5場A・C・D】
お金はないはずだけれど、オペラ座に行くからおしゃれしたってことで、前場とは違うドレスで下手花道から登場。スモーキーレッドの軍服風ジャケットとバッスルに2段に畳んだパラシュート(管理人談)の付いたスカートというこれまたセパレートタイプのドレス。畳んだパラシュート部分はタフタ風生地でスモ―キーピンク。袖、スカート本体の裾部分に白いレースが貼ってあります。
3場はジャケット、スカート本体と同じ色の帽子と、畳んだパラシュートと同じ色(生地は違います)のこうもり傘(^^;)のようなパラソルをさし、手にはオレンジのポーチを持って銀橋を横断します。
5場Dで三針くらい繕い物している水色のドレスは『白昼』東京で白河るりちゃん着用のドレスのようです。

【1幕5場G・H】
…お金のない衣装係ふぜいが、またお衣装を変えてエリックのアップライトピアノ(エリックは他にグランドピアノも所有)の奥から登場。
バッスルに3段に畳んだパラシュートの付いたクリームイエローのドレス。バラの地模様のある生地が基本形。パラシュートの下は同じクリーム色なんですが、地模様なし、タフタ風生地です。スカート部分はパラシュート(しつこいな^^;)、タフタ、パラシュートと同じ生地の3層構造。

【1幕6・7場】
エリックが用意してくれた真っ白いドレスを着て、オペラ座団員の溜まり場のビストロに登場。エリックはこのビストロは「オペラ座の向かいにある」と言ったけど、19世紀当時はオペラ座の向かいにそんなもんが建っていたんでしょうか?パリに行かれた方なら絶対ご存知。現在は広場と大通りなんですよねぇ……。
そんなことより、ドレスです。装飾過多、曲線と直線が混在したこのドレスは絶対衣装補さんデザイン(--#)。……ダサい……。スカートのドレープを小花のコサージュで留めたりするのは『聖なる星の奇蹟』の黄色のドレスと同じ手法。しかも色は違えど、きっと生地も同じ。
でも、このドレス、生地を3つも使っているんですよ。身ごろに使った小花の地模様のある生地、ストールとスカートの基本を占める無地、スカートの裾にほんのちょっと使ったバラ(だったかな?)の地模様のある生地。デコルテ隠しに使っているオーガンジー風の生地も含めると4つか。また、このデコルテ隠しの縫製がよろしくないのか、だぶついてて、気に入らないんですよねぇ。

【1幕8場B】
クリスティーヌの楽屋着は花總さん同様(^^;)ガウンのようです。
色見本か?と思うほど見事なオレンジのガウン。化学雑巾を彷彿とさせる(^^;)起毛の生地で、袖口と裾にレースが施してあります。巻き毛にジャスミンのような白い花を三つ編みを束ねた部分に散らした鬘がリリカルです。

【1幕9〜10場】
『フェアリー・クィーン』のタイターニアのお衣装。オーガンジー風の生地にチロリアンテープのようならぶりーな(タイターニアってらぶりーか???)小花の刺繍の施された、私の気に入らない衣装ワースト3のうちの一つ。オベロン役の初嶺ちゃんは『PUCK』でオベロンさま着用のお衣装を着ているので、二人の並びがとても違和感があります。
Aは結婚式のヴェール付き。Bでは『うたかた』以来久しぶりのお姫様抱っこをして自動ドア(^^;)の出入り口から地下へ。10場はエリックの舟で気を失っているだけです。
9場Aではエリックは指揮者として、銀橋に上がるまでオケピットでタクトを振っています。その横顔のすてきなこと!!でも劇場の半分以上の観客には後姿は見えても横顔なんて見えません。たかこさんのファンの方は下手タケノコ席を狙ってください。

【2幕1〜3場】
エリックにタイターニアのお衣装のまま連れ去られたはずのクリスティーヌ。しかし、同じ時間のはずなのに、お衣装が変わっております。……誰が着替えさせたのかしらね。10代の乙女なんだから、もう少し慌てなさい>クリスティーヌ
……しかもエリックまで着替えているわ(^^;)。
たっぷりとしたフリルの襟で、その襟もとは大きく開いております(メルトゥイユ夫人のネグリジェ参照)。そうね、花總さんなら開けとかないと(#^^#)。ウエストを共布のリボンでシェイプした白いネグリジェです。きっと任田デザイン。
この姿で、キャリエール氏の過去の卑怯者ぶり(^^;)をずっと下手に立って聞いています。下手タケノコに座れる時はその美しい立ち姿を見上げ、うっとりしてください。
しかし……クリスティーヌの寝室にエリックの母親の肖像画が飾ってあるのも変だが、その肖像画が花總さんのスチールを絵にしたものだというのはもっと変だ。エリックのママは音乃いづみちゃんです。そうそう、そのママ・ベラドーヴァが精神に異常を来たした時、まとっているストールはライラのストールです(……古いな^^;)。

【2幕5〜9】
ずっとポスターのお衣装です。一番いいお衣装ですね。これもきっと任田デザイン。ママの肖像画と同じドレスなわけですからきっとママのお古なんでしょう(^^;)。ライトが当たると大変きれいな光沢なんです。まさか本物のシルクタフタじゃあないでしょうね(^^;)。
マザコン青年にとって、愛するママの形見のドレス(本当か?)をまとった愛する女性に自分を拒否されたという事実は絶えがたいことでしょう。本当に、イヤな女だ。そしてそのイヤな女はどうやって逃げてきたのか、自分の楽屋へ。クリスティーヌの楽屋の地下との通路は自動ドア(しかしこの自動ドアはエリックしか認証しないらしい^^;)の上、人感センサーまで付いているらしく(^^;)、楽屋の外に人が立つと大変きれいなライトが灯されます(^^;)。シャンドン伯爵に助けを求めるこのシーン。大変美しいですね。
このドレスのまま、エリックを看取ります。
ママのドレスを着た、惚れた女に抱かれて息を引き取るエリックはある意味、幸せ者。そしてこういうシーンの花總さんはほんとうに素晴らしい。その母性、どこで学べばそんな包容力が出せるのかしら。そっと仮面をはずし、エリックの運命を決めた頬の傷に優しい口付けを贈るその『絵』の大変美しいこと。他のシーンなんていらない!この一瞬だけを見るためだけに通ってもいい!!と思いました。まあ、それには7500円は高すぎるし、ムラまでの交通費もばかにならないわ(^^;)。

最近の宝塚は必ずハッピーエンドにしなければならないのでしょうか?しかもラストシーンは大ゼリ使用が義務付けられているのでしょうか??でも死んだエリックと生きているはずのクリスティーヌが同じ時空にいるような演出はどうにも解せん……。しかもそれが舟に乗っているからなお更イヤです。例えばオペラでこのシーンを観ていたと仮定してくださいな。10列辺りに座ってて、10倍以下のオペラでセリまで少し画面に入っていると思ってくださいね。これがセリ上がってご覧なさい。川が増水しているように見えるだけですから!!!うるっと来た涙もすぐさま乾くから!!!!!
『JFK』でも『失われた楽園』でも男が死んで女が生き残ったがエピローグには二人とも確かに出演していた。しかしそこにはきっちり二つの空間があり、違う時間があった。
同じ舟に乗せるんなら二人とも死んでいただかなければ。それともクリスティーヌは世を儚んで、あれからすぐに自殺したとか言うのなら理解もしよう。…しかし、そんなことはあるまい。だから百歩譲って、彼女がエリックに会いたいと切望したあまりの妄想の映像化……と思ってあげるようにしている。でも舞台演出としてのあれは絶対によろしくない!!

【2幕10場B】
娘役さん達を引き連れて大階段センターを赤いドレスで下りてきます。ハイネック、オーガンジーとはいえ長袖ってことで気に入らない。

【2幕11場】
デュエットダンスです。花總さんの上手スッポンからのセリ上がりは珍しいですね。薄紫ではなく『紫』のドレスというのも珍しいですね。ハイネック、長袖、しかも透け感もなく……では、私のようなおやぢな(^^;)ファンにはつまらないお衣装です。しかもそんな妖艶な色とラストはボレロアレンジであるのに、クリスティーヌのイメージのままの鬘というのがちょっと……(T_T)。
歌劇の座談会では『真珠採り』とありましたが、どう聞いても『アルハンブラの思い出』。それともその二つはイコールなんですか(・・;)???どなたかオペラもタンゴも不案内な無知な私に教えてくださいませ。

【2幕12場】
パレードのためだけに作られたドレス。しかも若作り(^^;)なうっす〜〜〜〜〜いピンク……。しかも絶対衣装補さんデザイン。田舎の結婚式場にある緞帳のようなスカートのドレープも好きじゃない。手は込んでいるけどデザインがうるさい。過ぎたるは及ばざるが如しという言葉もありますしねぇ。
さすがに初日に見たときにはその醜悪さに暴れそうになりました。パレード全体のバランスからしてもこのピンクじゃないでしょう。その色にするのなら、そしてそんなにダサいデザインならポスターのドレスの白の方が絶対映える。ドレスの着こなしにかけては他の追随を許さない花總さんですが、さすがに年齢的にもこの色は止めた方がいいと思う。ドレス姿の花總さんを見て『きれいじゃない(>_<)!!』と思ったのは初めてです。
以上、11着。

今回は冠公演だからですか?新調と思われるお衣装が多いですね。エリックのお衣装もどれも素敵ですが、ご報告するほど男の衣装を真剣には見ているわけございません(^^;)。所詮ぽりーんは娘役ファンです。
そしてそんな私の楽しみは花總さんのドレスだけではございません。有ものドレスウォッチングもなかなか楽しいものです。……まあ、作品が好きになれないからいらんことばかり考えているってこともあるんですけどね(^^;)。
19世紀後半が舞台と言う事で、娘役さん達の有ものドレスも基本的には宝塚上演時は同じ年代として扱った作品から有ものも出ています。『うたかたの恋』、『珈琲カルナバル』、『アンナ・カレーニナ』、『フィガロ!』『マノン』『エイジ・オブ・イノセンス』、辺りが主な出典作品でしょうかね。これらとは時代もまるで違いますが、3場Aのかなみちゃんのお衣装は言わずと知れた『仮面のロマネスク』の花總さんのお衣装。ここは舞台衣装ということですから、支離滅裂なお衣装が出てますね(^^;)。前作新公ではトゥールベル夫人のドレスを着てラストシーンで堂々の花道登場されましたが、今回はメルトゥイユ夫人のドレスです。胸元のリボンに付いたコサージュが白になっていますけど。かなみちゃん登場の黄色のドレスは新調なんでしょうね。でもミツバチにしか見えない…。バッスルスタイルだから尚のことだわ(^^;;;;

こういう作品はリピーターが何回も何回も見るよりは大勢の皆さんに見ていただいた方がいいと思うんですよ。なんと言っても世界一美しく、現実離れした主演コンビだと思いますし、宝塚ファンも増えるでしょう。それともどうせ役の少ない作品なんだから、他のミュージカルのようにWキャストとかもいいかも(^^;)。Wキャストなら従来の宝塚ファンのリピーターで収益も上がりますからね。
初日は『なんだこれは?』だけで終わったものですが、回を重ねる毎にアンサンブルはどんどんよくなりますし、主演は文句なく美しい。評判は日増しに上がって行くでしょうね。こんな私たち(^^;)でも初日と3日目では多少当初とは意見も変って来ましたから。……演出のダサさは変らないんですけどね(--#)。
最近には珍しく立ち見も出るほどの盛況振りですから、東京はチケットないかも知れません。お時間とお金に余裕のある方は大劇で見ておいた方が安全かも知れませんね(^^;)。
以上、ものっすごく長くなりましたが、ぽりーんでした。