ぽりーん先生の観劇レポート vol.21

風と共に去りぬ

[04/11/8]

初日と後の方でちょっとだけ観た『風と共に去りぬ』。
当初、しぐさにも表情にも企みがありありと見えて、女が嫌いになる女No.1!という印象を受けた私たち。これまで初演(^^;)から色んなスカーレットを観てますが、初日の花總スカーレットは今まで観た中で一番嫌いなスカーレットでした(^^;)。
空回りしてるとか怖すぎる(^^;)とかあったけど、歴代のどなたさまもプロローグは精一杯スカーレットの自由奔放な憎めない可愛らしさを前面に出してくれてました。南部のご令嬢やおばさまたちに嫌われるのはしょうがない。でも、観客にまでそう思わせてはスカーレットとしてどうなんや???という感じ。観終わった後に終盤のチケットさばいたろか…とすら思ったもんです。
久しぶりに花總さんでもてこずったんだなぁ…と思わせてくれて、それはそれで面白かったのですが(^^;)。
終盤はさすが、花總まりって感じすばらしいお芝居を見せてくれたのですが。ただ、私的には花總さんはどっちかというと、運命を自ら切り開き強く生きていくというより、運命に翻弄されながらも、なんだかしたたかに生きている(^^;)という方がイメージ的に合うと思うんですよね。スカーレットを観るより、アンナ・カレーニナとかの方が観たいですねぇ…。
それと…地方は客席が近いので、一桁台のお席でなくても、お疲れが見えてしまうのが、ちょっと…。そうでなくてもエネルギーのいる役。それをツアーでやるとなれば、お疲れも出ましょうよ。…若くないし(^^;;;;
全ツは遠めのお席でオペラ越しに見るとひたすら美しいと思えていいですよねぇ…。
で…掲示版で管理人に一任されたお衣装報告なんですけど、今さら必要ですかぁ?『風共』って『ベルばら』なんかと違って、シーンごとのお衣装デザインの基本は初演から変わらないんですよねぇ…。

◆ 白いフリルに緑のおリボンドレス◆
プロローグとパレードに使われる、樫の木屋敷の園遊会に出かける時にマミーに昼間の席にそんなに肌を出してはいけないと叱られながらも、そのドレスを着ていったスカーレット。『スカーレット・オハラ』のイメージそのもののあのドレス。もちろん鬘はふたつにくくったソバージュにおリボン付き。ポスターのうね具合は大層手入れの行き届いた丁寧な鬘だったのですが、実際に公演で使っているのはずいぶんとキューティクルの抜け落ちたパサパサな感じ……(--;)。
今回の新調はこれでしょうかね。ポスターは日生版のドレスを着用しているようですけど。肩のおリボンに小花はついてませんし、後ろのおっきなおリボンにも模様が入っておりますし、別モノです。しかもそのフリルの張り具合はどう見ても新しい(#^^#)。
初嶺ちゃんは日生バージョンを着ています。足元は踊るわけでもないのに(^^;)おしゃれなTストラップの靴だったんですよ。

◆ 黒い喪服にベールと黒いレースのハンカチ◆
アトランタ到着から喪が明けるまでは黒いベルベット風生地にばら模様の付いたドレス。ベールを付けている間はきちんとカールされた前髪があるのですが、アシュレとの別れのシーン、つまりベール一式がなくなると、ひっつめ髪。…あの前髪はベールとセットでないと出れないものなのか???…まあ、あんな見事にカールされた前髪があっては『お別れのキス』がしづらいけどね(^^;)。
バザー会場で変なノリで腰を振り、踊る花總スカーレットですが、初嶺ちゃんには真似のできないノリだったようです。
そうそう、そのバザー会場で、なぜか昔から同じドレスなのに日生以来ファニー・エルシング嬢は提灯そでが身ごろからセパレートになった南部令嬢にあるまじき肌を顕わにしたドレスを着用していましたが、終盤ではその袖が身ごろにくっついているように着ていました(^^;)。そうだよね、その方が南部女性らしいわ。…でも、いくら長手袋しているとはいえ、ママも二の腕が顕わなんだよねぇ……(^^;)。

◆ アトランタの作業着◆
このセットはどんなに時代が変わり、再演を重ねても色合わせとか変わらないんですよねぇ。ブラウスとエプロン+小豆色のスカートには白いライン入り。鬘もわりと同じパターン。小豆色のネットでまとめたヘア。
これがアトランタが炎上する中を馬車で突っ走った後、タラに辿りつくと髪はばらばらに乱れ、衣服はどろどろに汚れ、エプロンは引き裂かれていることになります。スカーレットの愛らしいお顔も灰で泥だらけ。
…しかし…バトラー船長。あなたならどんなに銃身の長い拳銃でも扱えましょうが、女性にはその拳銃は無理だと思います(^^;;;;
護身用ならもう少し口径の小さい、上品なサイズのものを貸してあげて……。

◆ タラの作業着◆
2部はきらきらの『GONE WITH THE WIND』の前でアシュレの歌うなんだか暗い歌から始まります。あの曲は日生で追加された曲なんでしたっけ?それに続いて、いつものように「故郷は緑なり」。きらきらの吊りモノがはねると、そこは荒廃したタラ。アシュレさんは薪割りに、スカーレットさんは水汲みに…という感じでお芝居が始まります。
タラでは黄土色(^^;)が基本色のブラウスとスカート+エプロン。ブラウスは細うねの開襟ブラウス。エプロンはなぜか光沢のある素材…。この光るエプロンも気に入らんが、もっと気に入らないのはアシュレのお衣装には少しの煤け具合もない上にベストの後ろ身ごろはサテン素材ということです。昔はもっと作業着的なコーディネートだったと思うのですが。

今回の宙組バーションでは1部の終わりと2部の終わりに同じセリフをスカーレットはつぶやくんですよ。「タラ…タラ。この赤い土が私のもの…」というヤツ。これってスカーレット編では荒廃したタラに帰ってきてマミーと再会するという1部のラストシーンがないから、2部の冒頭で言わせていたように思う…と思って検証したら、月組バトラー編でも同じようなセリフを言ってたんですよねー(^^;)。でも言い回しはちゃんと違ったわ。やっぱりまるっきり同じセリフというのはどうかと思うのですよ。
…そう言えば、初演には2部のプロローグに幸せそうな新婚旅行中のスカーレットとレットという場面があったように記憶しているのですが。…誰も覚えてないかしら(^^;)???そこで歌われる曲が『風共』の中では唯一幸せそうなきれいな曲でわりと好きだったんですけどね…。歌えるけどタイトルは覚えていないんですよねー(^^;)。当時の実況LP(^^;)は著作権の関係とやらで芝居部分は全カットだったんですよね…。今は堂々とビデオもDVDも出せるし、NHKも中継してくれる時代になりましたけど……。

◆ 新築披露パーティの白いドレス◆
「私はレットと結婚するわっ!」と言って、緑のベルベットのカーテンで作ったドレスで着飾って300ドルの無心に行ったはいいが、レットに袖にされ、行き当たったスエレンの婚約者(=フランク)を横取りするというエピソードをすっと飛ばしてあっという間にバトラー夫人になったスカーレット。胸元を飾る華奢なネックレスが上品です。…それ、見覚えがないわ。
一路さんの時のドレスは白一色ではなく、模様とかリボンに黒を使ってあって(ステージスタジオではこのバージョンを使用)、それはちょっと好きではなかったのですけどね。一応新婚旅行から帰ってきて皆さまへのお披露目の席だし、白だけの方がいいと思うの。ほら、宝塚は決め所は白だから(^^;)。
それにしても、近年の花總さんには珍しく惜しげもなくデコルテを見せていただけるスカーレットは本当に楽しい(^^;)。でも、その自慢のデコルテも昔に比べれば落ちたかなぁ……(;_;)。あ…昔を懐かしんでばかりいてはいけないのよね?>スカーレット

◆ スキャンダル発覚時のグリーンのドレス◆
デザインは基本的に変わらない、ハイネックで前胸部はレースやリボンでデコレート、スカートは一部を前でたぐって後ろにまとめ、裾を後ろに引くタイプ。ピンクや紫の時もあったけど、これはグリーンの方がいいし、もっと言えば、深い緑がいい(あ、もちろん私見ですけどね)。今回のパターンは明るいグリーン地にモアレ地模様、提灯部分とドレープの部分に黒いレースをあしらった日生タイプ。私は初演のタフタ風グリーンのシンプルなものが一番好きです。
エキセントリックな花總スカーレットは酔っ払いの嫉妬に狂った夫にカットグラスの中身をぶちまけます。…氷がテーブルに用意してあるけど…それはロックではなかったのですよね?氷入ってたら痛いと思うし……(^^;;;;
だいいち、その時代ロックで飲むのか??チェイサーとかが置いてあるならまだしも…ねぇ(^^;;;;
…そんなに正体なく酔っ払ってしまうほど嫉妬の感情に支配されているなら、そんなグラスに注いで飲むなんてまどろっこしいことしないで、いっそボトル(ここだとデキャンタか^^;)一気飲みとかでもいいのに(^^;)。

◆ 別れのベルベットのドレス◆
これも基本のデザインは初演以来変わりません。色の方は紫だったり濃紺だったりしますけどね。今回は濃紺で、スカート部分は水色の軽めの生地も入ったツートンの日生バージョン。
スタンドカラーの襟合わせの部分には必ずカメオのブローチが付いています。カラーの部分もレースだけの時もありましたねぇ。でも、私はこの初演のころのデザインが好きだわ。
トップとボトムはセパレート式。スカートはスキャンダルドレスと同じように前をたぐって後ろでまとめる感じ。
プロローグの白いドレス姿なんかより、こういうしっとりとしたドレスの方が落ち着いて見ていられるようなキャリアになったんですねぇ…花總さん。『風共』の中で一番好きな花總さんです。

◆ ナイトアンドデイ◆
初日のころの企んだままの全然コケティッシュでもないナイトアンドデイも今思えばなかなか楽しかった(^^;)。あの振りがここまで可愛く見えないことも今までなかっただろうと思えるほどの (^^;;;;
ナイトアンドデイは一路さんのサヨナラショーで一度踊っています。この時は紫バージョンのドレスでしたっけ。袖がファのヤツですね。鬘もあの時のが好きだなぁ。変に飾り立ててなくて。
今回のドレスは基本に返った感じの緑のトップに白レースなボトムというタイプ。
セリフだって諳んじているし、ニュージェネレーションなんかは軽く歌い踊れるし、もしかしたらロケットだって、ナイトアンドデイだって踊れる(^^;)『風共』。別に大好きってわけじゃあないんですけどね(^^;)。

 

検証するためにビデオも探し出して見ましたよ(うちは軽く出てきたわ>管理人)。久しぶりにお子様な花總さんにも会えて楽しかったわ(^^;)。もちろん「綿の花が咲きましたー!」も聞いたわ。でも氷までは検証しなかった(^^;;;;

いくつか見比べてみると、どんなにスカーレットが企んでいようと、レットがます酒をすするように西洋のお酒をすすろうと(^^;)、芝居の完成度としてはなかなか高いものだったように思えました。
ウィルクス商会の建物は昔からケネディ商会の建物をリフォームもせずに使用していたようです。このあたりの原作の細かな点までは覚えていないんですけどね(^^;)。

芽映はるかちゃんのベルが初日からとてもよかったですよね。あばずれ度(^^;)はこれまでのベルよりは弱い感じもしましたが、別に娼婦という面ばかりを強調する必要もないと思うし。だって、ただの娼婦ってだけなら、あのレット・バトラーが通い続ける女にはならないと思うの。
あの難しい曲をほんとうにきれいな声で歌ってくれて、今まで聞いた中で一番好きな歌声でした。ベルがあんなにきれいな声で歌っていいかどうかはともかくとして(^^;)。ただねーセントルイス同様、いつぞやのTCAのせいであの曲が流れると指まで動いてしまうのですが(^^;;;;

まちゃみのメラニーは『エイジ・オブ・イノセンス』のメイの実績があるから、想像できたしそれほど不安には思いませんでした。ただ想像した通りの役作りでしたけどね。そして、まちゃみの若いちょっと健康的な(^^;)メラニーを見た後で月組を見ると、舞希さんのメラニーのなんて今にも死にそうな病弱なこと(^^;)。
その他、アトランタのおばさま達の助演ぶりはいつもながら天晴れって感じ。ピティパットおばさまはあゆみさんじゃあちょっと大柄かな?と思いました。ゆっちとかだったら小柄でもっと可愛く見えたのではないかと思うのですが、私の中でピティパットは深山しのぶさん以上の方はおりませんので(^^;;;;

演出の好き嫌い(^^;)はともかく、やはり文学性の高い作品などももっと上演して欲しいと思う、この全国ツアーでございました。