ぽりーん先生の観劇レポート vol.31

NEVER SAY GOODBYE

[06.4.10]

ブログの方で、管理人が書いているように、最後の公演であるのに、その衣装のつまらなさ、質素さに相当滅入っている、ぽりーんです。時代背景から言っても、豪華なドレスが出てくることはないと思っていました。でも、ここまでとは……。お芝居なんて虚構の世界。1968年にゴルチェでもよかったんなら、1936年にシャネルでもいいじゃんねぇ。…靴だけでなく。
お衣装報告なんて書きようもございません。しかしこの衣装でル・サンクのコスチュームのページを作る気だろうか…(^^;)。
点数としては6点(ケープと、コート下の格子柄のスカートを加えれば8点。二つの帽子を加えてやっと10点)+フィナーレ2点。
…1本立てですよね(^^;)?
一番好きなのはポスターのドレスかなぁ。デュエットの白いドレスも例によって長袖でね。しかも最近多い、透け生地の。…長袖ならいっそ透けたりしない身ごろと同素材でいいじゃんか(‐‐メ)。
最後の公演、任田デザインのお衣装をさりげなくしかし見事に着こなした花總まりが見たかった。

副題は『ある愛の軌跡』です。
でもテーマはスペイン内戦以外の何ものでもなく、ある愛の軌跡はほんっとに副えモノ。……だから副題は間違ってはいないわけです (+_+)。間違っているのはタイトルの方だ。さよならを言うとか言わないとかの問題ではなく、「市民よ立ち上がれ〜♪」がよほど重要なテーマのようです。藪下さんは『さすがは小池修一郎。すごい!天才!!スペイン内戦というテーマの中に二人の愛をくっきりと浮かび上がらせたコンビの演技力もさすが!!!』と大絶賛。
…でも…対して浮かび上がってもいないと思うんですけどねぇ。

スペイン内戦の中で燃え上がった愛の軌跡ならとうの昔に『誰がために鐘は鳴る』という名作がある。あれは、主人公達も内戦の当事者だったから(ロバートは本来違うけど)、『死』という崖ップチで展開される愛だの恋だのも実に切なかった。でもね、今回の二人は終盤まで(最後だって、国際義勇軍する必然性はまったくないわ>ジョルジュ)基本的にはただの傍観者なわけですよ。サヨナラなんて言いたくなければ、言わなくてもいい立場にあった人たちなのよね⇒ここからもうすでにおかしい。当事者でありながら最後まで生き残り、ちゃんと子孫を残したヴィセントだっているのに、ジョルジュって生き残るつもりはあったんだろうか?死ぬ必然性はどこにあったんだろうか??って疑問がずっと付きまとって離れない(+_+)。レオナードは死ぬしかない状況を自分で作ってしまった。そしてその結果必然的に自死を選んだ。それは解る。でもジョルジュはどうして最後に死ぬかなー。死ぬために義勇軍に参加するのなら(私にはそう思える)、それはもう「NEVER SAY GOODBYE」じゃないじゃない。

そして、キャサリンも最初こそ職業婦人だったけど、ジョルジュとくっついてからはただのつまんない女(バルセロナに来たらもうつまんないですね)。毎日のお天気おねーさんのようにバルセロナ便りを漫然とラヂオで流すより、優雅な音楽の下で革命をアジった「ミレナとワインを(だった?)」の方が何倍も根性が座っている。…まあ、あれはヒロインも革命家だったから立場がまるっきり違うけど。
でもね、あれだけ自分の仕事にプライドを持っていた女がたかが3番手の敵役に遮られたからと言って簡単に屈服するなんておかしいじゃない(これは宝塚的ものの見方ですね^^;)。自分の眼で見たものしか書けないから見に行くというだけの根性を持つ割には、したたかさも根性も足りないし肝だって座ってない。それは全部ジョルジュの前のポーズだったのか?>キャサリン
そして、幕開き当初のキャサリンが本来の彼女の姿なら、ラストシーンが未練がましすぎる。ジョルジュが希望を託すだけではなく、自らジョルジュの『希望』が生き残れる道を探し提案する女じゃないかしら?そういう女があなたと同じものを見ようとする女性だと思うわ>ジョルジュ

………まあいい。たとえそう描かれた女だったとしてもそれは娘役・花總まりの持ち味ではない。
バルセロナ以降、どんなに口だけは違う方法で戦うと言っても、所詮はジョルジュの庇護の下にいるように見えてはもういけないのよ。…これ自体は花總まりらしい部分ではありますが(^^;)。

そう、この作品はこのコンビの特性を、とりわけ花總まりの特性をまるっきり取っ払った作品であることには間違いございません。
花總まりは花のように佇んでなんぼ。蝶のようにひらひらしててなんぼ。そして、運命に弄ばれてなんぼ。愛だけに生きてなんぼ。不自由さの中でこそ光り輝く。
間違っても市街戦の最中に銃を持つ女ではないんですよ。

内戦がテーマだからつまらないわけじゃないです。これが、お披露目直後くらいのこれからこのトップさんと組を盛り上げて行きますよーという時期ならまあ、こんな宝塚のカラーじゃない作品のひとつもあっていいし、テーマ自体は宙組、とりわけ娘役たちには似合いなんですねぇ(でもね、こんなのばかりが得意じゃいけないのよ^^;)。花總まりがバルセロナ以降、おもしろくなくなるのと反比例するかのように、作品自体はここから面白くなるし、組子のボルテージも上昇一途。でも、組のカラーに合うからといってこの二人の最後にこれはちょっと…。
たかこさんは根無し草は持ち味ですから、いいと思うんですけどねぇ。ただ、どうせなら、レオナードのように成功したのに、女のために身を持ち崩して死を選ぶしかないところまで自分を追い込み、死に至る…という方が私の好きなたかこさんなんだけど。

テレサとヴィセントのカップルがとてもいいですね。これで二人に内因表現ができていればもっと哀しい。死を覚悟した内戦への参加で「じゃ!」って、日常の仕事に出かける時のようにバイバイされてもちょっと困ってしまうわ(^^;)。もっと含んだ感情があるはずよぉ!!
「あんたがここに残るような男なら最初から惚れない」なんてかっこいいセリフだって、そうは思っていても込み上げる不安とか、愛しさとか、いっぱいあるはずなのよ。笑顔は当然。でもその下の感情は一つではないんだからね>まちゃみ

次期主演娘役のるいちゃんは今回は振られ役・エレン。まあ、婚約者のいる身の娘役にはよくある役の振り方ですね。
『失われた楽園』のリア・モンテスの華麗なお衣装を着てますが、私の中では顔がほさちに置き換わっています(^^;;;;
アギラールもいい役ですねぇ。初日辺りに比べたらかます頻度も少なくなりましたけど……完璧ではないです(- -;)。歌がんばろうね>アヒ
こういう役をタニが出来るとまた違った話しになるんでしょうが。でも私、この役、たかこさんで観たかったですねぇ。女に執着する男をやらせたら最高なのに(^^;)。

どちらかと言うと硬派な作品で、女こどもが楽しく心踊らせて観るものではないです。現代史をほとんど学習しない高校世界史程度の知識ではなかなか付いていきづらいものがあるでしょう。ただ、ここしばらくの宝塚オリジナルの中ではいい作品ですし、楽曲はすばらしい。でも、やっぱりこのコンビには視覚的に美しい作品で愛のために生きるの死ぬのと浮世を忘れたありえない恋愛を展開して欲しかった。それがスーツものでもいいんです。だからこの二人の最後にあたって、茶色の世界は勘弁して欲しかったなぁ……。

観る価値がないとは言いません。でも1日2回はしんどいです。
2回観るなら1回は耳栓を持って行くか、どちらかはお昼寝と割り切ってご覧になった方がいいかも知れません(^^;)。…1回観たら、頭が疲れること請け合いです(^^;)。